「理系女子はネイルも化粧もできない」は本当なのか? 製造現場から見ると少し違う

先日、Xで「理系女子不足」をめぐる投稿が話題になっていた。

内容は、「化学実験ではネイルや化粧、香水は難しい」「機械系ではギアオイルまみれの作業もある」といった、理系の現実を紹介するものだった。最後には「ルールを守れる人は歓迎」という趣旨で締めくくられていたが、賛否両論となり、大きな議論を呼んでいた。

僕は製造業の現場で働いている。その立場から率直に言うと、この投稿にはかなり違和感を覚えた。

もちろん、危険物を扱う化学実験や特殊な研究設備では、ネイルや化粧、香水に制限がある職場は存在するだろう。しかし、そのような環境は理系全体から見れば一部でしかない。

それにもかかわらず、その一部を切り取って「理系とはこういう世界だ」と受け取られるような発信になってしまうのは、かなり現実とのズレがあるように思った。

僕が見ている製造現場はそんな世界ではない

僕が働いているのは量産型の製造現場だ。

そこで働いていて感じるのは、「女性はおしゃれを諦めなければ働けない」という時代では、もはやないということ。出勤後に作業着へ着替える職場がほとんどなので、薄めのメイクをしている人もいれば、シンプルなネイルを楽しんでいる人も珍しくない。若手ではなくベテラン女子技術者は化粧もするし香水もしている。

現場はクリーンルームで、会社のルールに沿った範囲であれば問題なく勤務している女性社員を普通に見かける。「女性だから化粧ができない」「ネイルが一切できない」という話ではない。

製造業は昔とはかなり変わっている

製造業というと、「油まみれ」「重い物を運ぶ」「男性ばかり」というイメージを持つ人もいるかもしれない。たしかに製造系の部署は今でも男性が大半を占めており女性は少ないが、それでも昔に比べずいぶん変わった。

人手不足を背景に、多くの企業が女性の採用を積極的に進めている。設備の自動化も進み、昔のような力仕事ばかりではなくなった。生産技術、品質保証、品質管理、DX推進、工程改善など、女性が活躍している部署はいくらでもある。

僕の周りでも女性社員は年々増えているし、ごく自然に戦力として活躍している。だから、「理系に進むと女性らしさを捨てなければならない」という印象を与える発信を見ると、それは今の現場を知らない人の見方ではないかと思う。

研究室の常識が、現場全体の常識ではない

今回の投稿を書いた人は、研究やデータ解析が専門なのだと思う。あの様子だとたぶん企業で勤めた経験はない。大学か産総研のような研究機関か(あるいは自宅警備員のエアプ)

研究機関の環境では確かに厳しいルールがあるのだろう。僕の経験からこういった職場では教科書レベルにやたら詳しく不必要なルールを設ける一方で、特に安全面に言えるが、かなりいい加減な部分も多々あって歪な環境下にあるイメージ。実体験に基づかずたまたま読んだり聞いたりしたものを取り入れているからだと思う。

なので、その経験だけで理系全体を語るのはかなり乱暴。

一方で、企業は過去の品質問題や安全上の問題と言う実体験に基づいたルール・仕組みを構築した一方で厳しいコスト競争に打ち勝たなければならない環境であるため、不必要な対策は講じない。理にかなったルールしか設定しない。

また、研究開発、生産技術、品質保証、品質管理、設備保全、情報システムなど、働く場所はいくらでもあり、「理系職場とはこうである」のような一辺倒の環境ではない。「理系とはこういうもの」と語ってしまうと、多くの学生に誤解を与えてしまうので甚だ迷惑な話である。

理系女子が少ないことは、製造業全体にとって大きな課題だと思う。でも、その原因を「ネイルができないから」「化粧ができないから」という話に結び付けるのは、あまりにも単純すぎる。

進路は興味や得意分野、学校教育、家庭環境、ロールモデルの存在など、多くの要素が重なって決まる。

ネイルもメイクも工夫しながら楽しんでいる人は普通にいるし、それが理由で理系を諦めたという話はほとんど聞かない。

興味があるなら、自分の目で確かめよう

もし理系や製造業に興味があるなら、SNSの投稿だけで判断しないでほしい。元ポスを真正面に受け止めてしまって文句を言う女性アカウントも多数あったが全くもって無駄。会社説明会や工場見学など、そういった場所から情報を得るといいと思う。会社によって文化もルールも大きく違うしね。

というか、中学高校生だったらまずは勉強に集中しよう。理系の数学めちゃ難しいし分量も多いので、そんなことに振り回されていたら時間がもったいない。興味ある分野に一直線に目指すべき。

大学になったら多少余裕ができる(実のところ理系はあまり余裕ないのだが高校よりは)ので、会社説明会のようなものは大学に入ってからで十分だと思う。