AIが芸能界を食う日は意外と近い? ショートドラマから始まる映像コンテンツの変化



最近、SNSを眺めているとショートドラマの広告がやたらと目に入ってくる。

スマートフォンで見ることを前提にした短いドラマで、数十秒から数分程度の動画を次々と見せていくタイプのものだ。TikTokやInstagramなどの短尺動画との相性もよく、最近ではかなり大きな市場になっているように感じる。

そんなショートドラマを見ていて、最近少し気になることがある。

「これ、AIで作っているのでは?」

そう思わせる映像がちらほら出てきたのだ。

もちろん、現時点では本格的な映画やテレビドラマと比べれば、AIで作られた映像にはまだ違和感がある。人物の動きや表情、口元、背景などをよく見ると、「いかにもAIで作った映像だな」と感じることもある。

しかし、ショートドラマという形式になると話が変わってくる。

多少の違和感があっても、視聴者はそれほど気にしない。

そもそもスマートフォンの小さな画面で、短時間の動画を見るコンテンツだからだ。

ここが重要なのではないかと思っている。

「AIにはまだドラマは無理」という話ではない

AIによる映像生成について語るとき、よく「まだ映画を一本作れるほどの品質ではない」という話になる。

確かにその通りだと思う。

2時間の映画を最初から最後までAIだけで制作し、人間が作った映画と区別できないレベルに仕上げるとなれば、まだいろいろな問題がある。

しかし、これは逆に言えば、

「映画を作るにはまだ早い」だけで、「短い映像コンテンツを作るには十分な品質になってきた」

とも言える。

例えば30秒、1分、数分程度の映像なら、AIによる多少の不自然さをごまかしやすい。

さらにショート動画は、そもそも視聴者が大量のコンテンツを流し見することを前提としている。

一つ一つの映像に映画のような完成度を求めているわけではない。

この違いは大きい。

AI映像の品質が「人間の制作物と完全に区別できないレベル」になるのを待つ必要はない。

「視聴者が気にしない程度の品質」に到達すれば、商売として成立してしまう可能性があるからだ。

以前から「次にAIが食うのは芸能界」と考えていた

僕は以前から、AIによって大きく変わる業界の一つとして芸能界を考えていた。

AIがプログラマーの仕事を奪う、事務職を奪う、クリエイターの仕事を奪う……という話はよく聞く。

しかし、AIがこれほどまでに「人間の姿」「人間の声」「人間の演技」を生成できるようになってくると、芸能界も無関係ではいられない。

俳優、モデル、声優、ナレーターなど、人間そのものをコンテンツとして提供してきた仕事は、AIとの相性が非常にいい。

ただ、僕は以前から、いきなりテレビドラマや映画からAI化するとは考えていなかった。

むしろ、その前段階として、既存の芸能業界とは距離のあるところから始まるのではないかと思っていた。

その一つがアダルト業界だ。

この業界は、良い悪いという話ではなく、これまでにも新しい映像技術や配信技術を比較的早く取り込んできた歴史がある。

そして何より、既存の芸能プロダクションやテレビ局などが持っているような強固な業界構造に縛られにくい。

「AIで人間を作ることができるなら、とりあえず使ってみよう」

という判断をしやすい。

ところが、実際にはそれより先に、もっと使いやすい場所があった。

ショートドラマである。

ショートドラマはAI映像の実験場になる

ショートドラマには、AIとの相性がいい条件がいくつもある。

まず制作時間が短い。

そして一本あたりの制作コストを低く抑えることが重要なので、AIによるコスト削減効果が大きい。

さらに、視聴者はスマートフォンで見る。

映画館の大画面で見る映像とは違い、細かな違和感が見えにくい。

そしてもう一つ重要なのが、コンテンツを大量に供給する必要があることだ。

ショート動画の世界では、一つの作品をじっくり作って長期間売るというより、次々と新しい動画を投入して視聴者をつなぎ止める必要がある。

これはAIの得意分野とかなり重なる。

人間が脚本を書き、俳優を集め、撮影場所を確保し、撮影して、編集して……という工程を踏んでいたものを、AIによって大幅に短縮できる可能性がある。

そうなると、

「一本のドラマを作る」というより、「大量のドラマを生成して、その中から当たったものを伸ばす」

というビジネスモデルが成立するかもしれない。

これは従来のテレビドラマとはかなり違う。

芸能プロダクションを必要としないコンテンツが増える

ここから先が、個人的にはかなり面白いところだと思っている。

従来のテレビドラマなら、俳優をキャスティングし、芸能プロダクションとの契約があり、制作会社があり、テレビ局があり……と、多くの人や企業が関わっている。

ところがAIで架空の俳優を作れるようになれば、その一部を飛ばせる。

もちろん実在する人気俳優にはブランド価値があるので、すぐに不要になるわけではない。

しかし、これまで「名前のない脇役」だったり、「エキストラ」だったり、「モデルが必要だった広告」だったりした部分から、少しずつAIに置き換わっていく可能性はある。

そして一度AIキャラクターが人気になれば、その人物は実在する必要すらない。

ドラマの中だけでなく、SNSにも登場し、広告にも登場し、ゲームにも登場する。

「俳優を使ってコンテンツを作る」のではなく、

「AIキャラクターそのものを育ててコンテンツを作る」

という発想も出てくるだろう。

若者がAI俳優を「普通の存在」として受け入れる可能性

もう一つ重要なのは、視聴者側の感覚だ。

今の中高年からすると、「AIが演じているドラマ」と聞けば、どうしても「本物の俳優ではない」という違和感を持つ。

しかし、これからスマートフォンでショート動画を見る世代にとってはどうだろうか。

最初からAIキャラクターを当たり前のものとして受け入れる可能性がある。

そもそもSNSでは、実在する人間なのか、加工された人間なのか、CGなのか、AIなのかが分かりにくいコンテンツがすでに大量に存在している。

そこに「AI俳優によるショートドラマ」が加わったとしても、若い世代にとっては、それほど大きな抵抗感がないかもしれない。

むしろ、

「このキャラクター面白い」

「このAI俳優好き」

という具合に、普通のキャラクターコンテンツとして消費される可能性もある。

テレビまでAI化するのは、もう少し先だと思う

では、テレビドラマや映画まで一気にAI化するのか。

僕は、そこまではまだ時間がかかると思っている。

技術的な問題だけではない。

テレビには芸能プロダクションとの関係があり、出演者の知名度やブランドもある。

スポンサーの問題もある。

「AIで全部作れば安いから、明日からAIドラマにします」というほど単純ではない。

むしろ、既存のテレビや映画より先に、

スマートフォン向けのショートドラマ市場でAI化が進む

と考えたほうが自然ではないだろうか。

そして、そこでAIによる制作手法が確立され、視聴者もAIコンテンツに慣れてくる。

その後にテレビや映画など、より大きな市場へと広がっていく。

そんな流れになるのではないかと思っている。

「AIが芸能界を奪う」のではなく、芸能界の外側から侵食していく

今回ショートドラマを見ていて感じたのは、AIによる芸能界の変化は、既存の芸能界の中心から始まるとは限らないということだ。

テレビ局がAI俳優を採用する。

映画会社がAI俳優を大量起用する。

芸能プロダクションがAIタレントを売り出す。

そういう順番ではないのかもしれない。

むしろ、

小さなスマホコンテンツ → ショートドラマ → SNS → AIキャラクター → 広告 → ゲーム・アニメ → テレビ・映画

というように、芸能界の外側から少しずつ侵食していく可能性がある。

そして、その頃には「AIだから安っぽい」という感覚自体がなくなっているかもしれない。

今はまだ「AIっぽい映像」が目立つ。

しかし、AIであることを意識しなくなるほど品質が上がったとき、状況は一気に変わる。

重要なのは、AIが人間の俳優と同じ品質になる日ではない。

「人間の俳優を使わなくても、視聴者が満足する日」が来るかどうかだ。

そしてショートドラマという市場は、その実験場としてかなり条件が揃っている。

最近増えてきたショートドラマの広告を見ていると、もしかすると今は、その変化の入口なのかもしれない。

僕が以前から考えていた「次にAIが食う職業は芸能界」という話も、意外とテレビの中ではなく、スマートフォンの小さな画面から始まるのではないだろうか。