米AIテック企業に「1.6兆ドルの簿外債務」があるらしい。AIバブルの崩壊を招くのか?



AI関連企業への巨額投資が続いている。生成AI、GPU、データセンターと、とにかくものすごい金額が動いている一方で、「これはAIバブルではないか」という声も出ている。そんな中で少し気になるのが、米テック企業を巡る「1.6兆ドルの簿外債務」という話だ。日本円にすれば200兆円を超える規模になるので、数字だけでもかなりインパクトがある。

もちろん、この数字だけを見て「AIバブルが崩壊する」と考えるのは早いと思う。ただ、その仕組みを知ると少し気になる部分がある。巨大テック企業がデータセンターを作る際、自社で直接借金をするのではなく、SPV(特別目的会社)という別会社を使って資金を調達するケースがある。SPVが銀行などからお金を借りてデータセンターを建設し、それを親会社にリースする形だ。会計上はルールに沿った取引でも、経済的な実態まで考えると、「本当に親会社とは無関係な借金なのか」という疑問は残る。

さらに気になるのが、AI関連企業の間で資金が循環しているように見える構造だ。たとえば、AI関連企業に投資された資金がGPUの購入に使われ、そのGPUを担保にさらに資金を借り、また設備投資を行う。実際にはもっと複雑な取引だが、外から見ると「AIで稼いだ利益で投資を回収する」というより、「AI関連企業に流れ込んだ資金で、さらにAI関連設備を増やしている」ようにも見える。

ここで問題になるのが、最終的に誰がその投資を支えるのかという話だと思う。AIの利用者が増え続け、十分な利益が生まれるなら大きな問題にはならない。しかし、AIモデルの競争が激しくなれば利用料金は下がる。中国企業などから安価なAIが登場すれば、さらに価格競争が進む可能性もある。数千億円をかけてデータセンターを作ったのに、AIサービスの価格がどんどん下がってしまえば、投資を回収するのは簡単ではない。

個人的に気になるのは、株式市場よりもむしろ債券市場の動きだ。株式市場では「AIはすごい」という期待が先行しやすいが、債券市場では企業が本当に借金を返せるのかという点がより重視される。社債利回りの上昇やCDSのプレミアム上昇が続くのであれば、投資家がAI関連企業の財務リスクを以前より意識し始めている可能性もある。「AIすごい!」と盛り上がる株式市場の横で、債券市場が「ところで、その借金は本当に返せるんですよね?」と聞いているようにも見える。

リーマン・ショックとの類似性を指摘する声もあるが、僕はそこまで単純に重ねるのはどうかなと思う。当時と現在では金融システムも企業構造も違う。ただ、共通しているように見えるのは、表面上は別々に見える企業や投資が、実は複雑な金融取引でつながっていることだ。レバレッジが大きくなれば、好調なときには投資をさらに拡大できるが、逆回転を始めると影響が一気に広がる可能性がある。

結局、AIそのものがバブルなのかどうかはまだ分からないと思う。AIが社会を大きく変える技術であることと、AI関連企業への投資がすべて正当化されることは別の話だからだ。インターネットも最終的には社会を大きく変えたが、だからといってネットバブル当時の企業価値がすべて正しかったわけではない。

本物の技術でも、そこにお金が集まりすぎればバブルになる。今回の「1.6兆ドル」という話も、その金額そのものより、AIという巨大な期待の裏側で、どれだけ借金と投資が積み上がっているのかを見るきっかけとして捉えたほうがいいのかもしれない。AIが嘘なのか、本物なのかという二択ではなく、本物の技術に、過剰なお金が流れ込んでいないか。僕としては、そこを少し冷めた目で見ておきたいと思う。