「男は若い女しか見ない」「女は金しか見てない」←どっちもどっちだよね。



SNSを眺めていると、定期的に同じ論争が沸き起こる。「男は結局、若い女ばかり狙う」
「女は結局、金や地位のある男ばかり見る」
双方が理屈を並べ、相手を非難し、自分の傾向を正当化する。

けれど、ちょっと引いて眺めると、どちらも似たようなものに見えてしまう。どっちもどっちという感じ。僕自身はこれらは単なる文化的な偏見や後付けの言い訳ではなくもっと奥深い根源的な素養——脳の深いレイヤーに位置する根源的な傾向じゃないかなと思っている。

で、実際にどうなのかちょっと調べてみた。

進化心理学が示す基本的な性差

人間の配偶者選択を説明する代表的な枠組みは、親の投資理論(Trivers, 1972)と、それを発展させた性的戦略理論(Buss & Schmitt, 1993)だ。

女性は妊娠・出産・授乳という大きな義務的投資を背負う。一方、男性の最小投資は相対的に小さい。この非対称性が進化の過程で異なる心理メカニズムを生み出したというのが基本的な考え方のようだ。

その結果として、長期的な関係では次のような傾向が予測される。

  • 男性は「繁殖可能性(fertility)」と「将来の繁殖価値(reproductive value)」の高い相手を好む → 若さや身体的魅力が手がかりになる
  • 女性は「資源を提供する能力と意思」のある相手を好む → 経済力・地位・野心・年長さが手がかりになる

クロスカルチャー研究が示した「普遍性」

この予測を大規模に検証したのが、David M. Bussによる1989年の研究だ。33カ国・37のサンプル、約1万人を対象に「理想の配偶者像」を尋ねたところ、驚くほど一貫した結果が出たそうだ。

  • 男性は、文化を問わず「自分より若い配偶者」を好む傾向が確認された
  • 女性は逆に「自分より年上」を好む傾向がほぼすべての文化で見られた
  • 女性は「良い経済的見通し」を男性より明確に高く評価した

その後の再現性調査でも同様だった。

2020年に発表された45カ国・約1万4000人を対象とした大規模調査でも、「男性は若く魅力的な相手を、女性は年上で経済的見通しの良い相手を好む」という性差が頑健に再現された。

実際の結婚データでも、世界中で夫が妻より年上というパターンがほぼ普遍的に観察される。オンライン上のコミュニケーションや個人広告の分析でも同じ傾向が行動レベルで確認されている。

なぜ「若さ」と「資源」なのか

女性の生殖能力は思春期後半から20代前半にピークを迎えその後比較的急激に低下する。一方、男性の生殖能力は年齢による低下が緩やかだ。

この生物学的な事実が、男性側の「若さ」への感度を進化させたと説明される。女性側にとっては子どもを育て上げるための資源が決定的に重要だった。現代では「お金」や「社会的地位」という形で現れるが、本質は「長期的に安定した投資をしてくれるかどうか」。

興味深いのは、これらの好みが完全に固定されたものではない点で、最近の実験研究では、個人の収入や性別間の経済格差を操作すると資源への好みの性差は縮小したり消失したりすることがあるらしい。

一方で、年齢差や身体的魅力への好みの性差は比較的影響を受けにくいという結果も出ている。つまり、資源好みは状況に応じて調整されやすいが、「若さ」への好みはより深い層に位置している可能性がある。

以上がざっと調べた学術的な根拠。

SNSで論争が止まらない理由

SNS上の論争が熱を帯びるのは、双方が「相手の傾向を道徳的に批判しつつ、自分の傾向を合理化する」からだろう。

男性は「若さを求めるのは自然だ」と言い、女性は「経済力を求めるのは現実的だ」と言う。逆に、相手の傾向については「浅はか」「拝金主義」と非難する。

けれど、進化心理学の視点から見れば、どちらも同じレベルの心理メカニズムであるわけで。

もちろん、個人差は大きいのは事実で、すべての男性が若い女性だけを、すべての女性が金持ちだけを求めるわけではない。現在の価値観の多様化によってこの傾向が緩和される場面も増えているだろう。

それでも、平均的な傾向としての性差は、複数の独立した研究・方法・文化で繰り返し確認されているのもまた事実

おわりに

「男は若い女を、女は金のある男を選びがち」という現象を単なる現代社会の歪みや個人の性格の問題として片付けるのは浅はかというのが以前からの僕の印象で、いろいろ調べたところやはりそうだったという結果だった。

長い進化の歴史の中で、生存と繁殖のために形作られてきた、脳の深いレイヤーの話である。その理解が少しでも建設的な論争に変えてほしいなと思う。