CO₂よりアスファルトのほうが暑い?調べてみたら意外な結果になった



前回の記事で、僕は「CO₂削減と温暖化対策は、本当に同じものとして考えていいのだろうか」という疑問を書いた。

その中で一つ気になったのが、都市化やアスファルト舗装による温暖化だ。

考えてみれば、昔は田畑や森林、土だった場所が、道路や駐車場、建物で覆われている。特に2000年代以降、中国をはじめとする新興国では急速な都市化が進んだ。日本の建設機械メーカーが海外、とりわけ中国市場で大きく事業を拡大した時期とも重なる。

だったら、地表そのものが変わったことによる温暖化は無視していいのだろうか。

僕の感覚では、アスファルトやコンクリートが増えれば太陽熱を吸収して、かなりの温暖化要因になるように思える。ひょっとすると、CO₂より大きいのではないかと思った。

そこで今回は、感覚ではなく公表されているデータを調べてみた。

世界の「舗装された土地」は本当に増えている

まず、この感覚自体は間違っていなかった。

ただし、世界全体のデータでは「アスファルト面積」だけを測定するのは難しい。そのため研究では、道路、建物、駐車場などを含む不透水面(impervious surface)という指標がよく使われるらしい。

30m解像度の衛星データを使った研究によると、世界の不透水面積は1985年の約51.2万km²から2020年には約108.7万km²へ増加している。

なんと35年間で約2.1倍だ。特に増加が大きかったのがアジアで、約19.1万km²から約48.5万km²へ増えている。研究でも、中国やインドなどの発展途上国で急速な不透水面の拡大が確認されている。

この数字を見ると、「2000年代以降、中国などで急速に地表が人工物に置き換わった」という僕の感覚は、それほど的外れではなさそうだ。

問題は、それが地球全体の気温をどれだけ押し上げたのかだ。

都市が暑いのは事実

これは疑う余地はない。いわゆる「ヒートアイランド現象」だ。

都市ではアスファルトやコンクリート、建物などが熱を蓄え、さらに植物が減ることで蒸発散による冷却も弱くなる。自動車やエアコンなどから出る人工排熱も加わる。

IPCCも、都市化によって都市と周辺地域の気温差が生じることについて非常に高い確信度で評価している。都市化による平均的な気温上昇は地域によって異なるが、都市部では数℃規模になる場合もある。

つまり、

「アスファルトや都市化で実際に暑くなる」

という部分については、かなり確かな話だ。

僕が「CO₂よりアスファルトのほうが暑いのでは?」と思ったのも、ここが理由だった。

ところが、世界全体を対象にすると話が変わってくる。

都市では1℃以上、でも地球全体では……

2022年に発表された衛星観測による研究では、2015年の都市部における地表面の都市ヒートアイランド強度は、世界の都市平均で約1.1℃だった。

ところが、この都市化による影響を地球全体の陸地に平均すると、温暖化効果はわずか0.008℃と推定された。

この数字にはちょっと驚いた。

都市にいる人間からすれば「1℃以上も違う」のに、それを地球全体に広げると0.01℃にも届かない。

理由は単純で、都市や舗装された場所が地球全体に占める面積は、それほど大きくないからだ。

都市化の影響は局地的には非常に強い。しかし、地球全体の平均気温を押し上げる要因として考えると、その影響はかなり薄まる。

IPCCも、都市化による全球平均の地表気温への影響は「無視できる程度」と評価している。

アスファルトの「黒さ」だけなら、さらに小さい

もう一つ気になったのが、アスファルトの色だ。

アスファルトは黒っぽい。つまり太陽光を反射せず、熱として吸収しやすい。一方、舗装される前の土地が草地や農地などであれば、地表面の性質は違う。

そこで「都市化によるアルベド(反射率)の変化」だけを計算した研究もある。

2001年から2018年までの都市化によるアルベド低下を調べた研究では、地球全体の100年間平均の気温への影響は約0.00014℃の温暖化と推定されている。

0.00014℃。

さすがに小さい。

もちろん、これは「都市化による温暖化」のうち、アルベド変化だけを取り出した数字なので、これをもって「アスファルトの影響は0.00014℃しかない」とすることはできない。

都市化には、植生の減少、蒸発散の変化、建物による風の変化、人工排熱など、さまざまな要素があるからだ。

それでも、少なくともアスファルトの黒さだけで地球全体が大きく温暖化している、という説はデータからは支持しにくい

では、僕の「アスファルトのほうがCO₂より大きい」という仮説は?

残念ながら、今回調べた範囲では、これはかなり厳しい。

むしろ現時点の科学的な整理は、

都市化・舗装化は、局地的にはかなり大きな温暖化要因だが、全球平均では非常に小さい温暖化要因というものになる。

IPCCも、都市化が都市や地域の気温に与える影響は明確に認めている一方、全球平均の気温への影響は無視できる程度としている。

つまり、

「東京のアスファルトが暑い」

「アスファルトが地球温暖化の主要因である」

は、似ているようで全く違う話だった。

それでも「都市を冷やす」という考え方はアリだと思う

では、アスファルトについて考える意味がないのかというと、僕はそうは思わない。

地球全体の平均気温を下げる効果は小さくても、都市に住んでいる人にとっては、舗装面を減らしたり、緑地を増やしたり、建物の断熱性を高めたり、日射を反射する素材を使ったりすることには意味がある。

IPCCも、将来の都市化によって都市のヒートアイランドが今後の温暖化の影響をさらに強める可能性を指摘している。

つまり、「地球を冷やす」効果は小さくても、「人間が感じる暑さを減らす」効果は大きいということ。

これは前回の記事で書いた「人間が削減できるもの」という話ともつながってくる。

CO₂との比較で見えてきたこと

今回調べて、僕自身の考えも少し修正された。

最初は、

「こんなにアスファルトが増えているのだから、CO₂以上に温暖化へ効いているのでは?」

と思っていた。

しかし、全球平均という尺度で見ると、今のところその根拠は見つからない。

むしろCO₂については、累積排出量と温暖化の関係がかなり明確に評価されている。一方、都市化や舗装化については、局地的な影響は大きいものの、全球平均では小さいというのが現在の科学的な整理に近い。

これは、前回の記事で書いた「CO₂削減に疑問がある」という僕の立場を少し複雑にする結果でもある。

少なくとも、

「アスファルトのほうがCO₂より温暖化に効いているから、CO₂削減は意味がない」

とは言えそうにない。ここは素直に認めたい。

ただ、それでも僕には別の疑問が残る。

「では、温暖化対策と呼ばれるものは、どこまで『気温を下げること』を目的としているのだろうか」

CO₂削減は、基本的には将来の温暖化を抑えるためのブレーキだけど、一方、都市の緑化や舗装の見直し、建物の断熱などは、今そこにいる人間の暑さを直接減らす。

同じ「温暖化対策」という言葉で括られていても、実際にやっていることはかなり違う。

だから僕は、CO₂削減かアスファルト対策かという二択にするより、

「地球全体の温暖化を抑える対策」と「人間が実際に受ける暑さを減らす対策」を分けて考えたほうがいいのではないか

と思う。

今回調べた限りでは、僕が最初に考えていた「アスファルトがCO₂級の温暖化要因」という仮説はどうやら外れていた。

でも、調べてみたからこそ、「都市では1℃以上暑くなるのに、なぜ全球平均では0.01℃にもならないのか」という別角度の問題が見えてきた。

こういう「自分の予想をデータでひっくり返される」調査は、なかなか面白いものだと思った。