僕は某業界のエンジニアです。もう20年以上やっています。
この20年、「改善する」とか「開発する」という言葉を何度も使ってきました。
そんな20年以上を過ごしてきたエンジニアの僕が言いたいのは、技術力というのは時間との勝負であって、それを決定づけるのは「お金」と「人の数」であるってことです。
※「人の数」は「お金」次第なので、結局のところ「お金」に集約されるかも。
よく、ネットとかテレビを見ると、日本の技術は、日本のエンジニアや研究者が他国をしのぐ圧倒的な優秀さにあるような描かれ方をしていますが、そんなのはアニメかドラマの世界です。
もちろん、集団の中にはとても頭のいい人がいるのはたしかなのですが、それは欧米でも中国でも同じです。
そして、その頭のいい人が存在し得るのは確率論でしかないので、「人の数」が増えれば得る可能性が高まります。そんなもんです。
技術というのは小さな実験の繰り返しの中で得られる
アニメやドラマだと、1人の天才が「これだ!」とひらめいて、そこからの展開がとても早いです。いかにも、その閃きが逆転を決定づけたかのような描かれ方をします。実際の技術の現場はそんな単純なものではなく、小さな実験を繰り返した中で得られるものなのです。とても地味な作業です。
実験の結果を受けて関係者で議論して次の実験の方向を決めて…という繰り返しです。
例えば、その実験を担うエンジニアが3人いたとして、結果的に300通りの実験を実施したとしたら、1人100実験、1つの実験に1日かかるとしたら100日かかります。
実際はそのエンジニアが実験だけに従事するわけにはいかないし、実験装置もタイミングよく使えるわけではないので、そんなことを調整したりして実際はもっと時間がかかります。結局1年くらいかかっちゃうんじゃないでしょうか。
そんな地味な作業を経て、技術というものが確立されていくものなのです。
余談ですが、一時期「タグチメソッド」なる実験手法が流行りましたが(まだ使っている会社あるんだろうか?)、今はあまり好まれていません。
詳しくは割愛しますが、未知のパラメーターがあるとそのバラツキでうまく結果が出ないという点と、結局70~80点くらいの結果しか見いだせないという欠点があると思います。まあ、大きな理由は前者かな。
開発を一瞬で終わらせる一番の方法
そんな地味な開発作業を一瞬で終わらせる方法があります。それはエンジニアの数と開発費を無尽蔵に供給すればいいのです。
先ほどの例でいくと、300通りの実験を300人が受け持って、その実験専用の装置を買いそろえれば1日で終わってしまいます。
先ほどの現実的な例では1年くらいかかるかもと書きましたが、人とお金が無尽蔵にあれば1日で終わっちゃうんですね。
技術というのは「どの会社が一番早く開発したか」で決まります。
特許申請もそうだし、いち早く世に送り出すことができるかどうかが、技術を確立する上で最も重要なことなんです。
今、自動車を開発しましたと言ってもアホとしか思われませんが、自動運転車を世に送り出したら、その会社はナンバーワンとなるわけです。
開発の肝は「スピード」なんです。
そして、それを決定づけるのは、「お金」と「人の数」なのです。
中国の人の数とお金の使い方には到底かなわない
僕が言いたいのはここです。中国企業のお金の使い方は桁違いです。エンジニア、開発者の人数も桁違いです。
たしかに今はまだ日本の方が優っている技術は多いです。その技術はもしかして中国には追い付かれないかもしれません。
・・・が、技術というのはいつか陳腐化します。代替え技術が登場したらあっという間に無意味なものになってしまいます。
デジタルカメラが登場したときにフィルムカメラが駆逐されてしまったように、例えば電気自動車の登場で日本の自動車技術は陳腐化するかもしれません。
従来の世界の勝っている技術はいつまでも勝ち続けることはほぼ不可能でしょう。
そして、これから登場する新しい技術に対しては、中国の投資額は半端ありません。ゲノム、人工知能、IT技術…etc
これらに日本が勝つことはほぼ不可能だと思います。理由は先ほど述べた通りです。
中国のことをバカにする人たちへ言いたいこと
政治的な発言をする人の多くは、中国のことをバカにした言い方をします。で、そういう人は、いまだ日本の技術は優れていると盲信しています。その本人はエンジニアでも研究者でもないんだけどね…。現役エンジニアの僕からするととても滑稽です。
先ほど例に挙げたゲノム、人工知能、IT技術は現時点ですでに日本は抜かれています。
自動車技術はまだ日本が上だけど、おそらく電気自動車が広まったら一気に抜かれると思います。そうなったら日本車は世界に見向き去れなくなるんじゃないかな。