大塚家具の大塚久美子社長が失格の烙印を押されてるとか。
思い出すのが父親とのプロキシファイトで、当時は多いな話題を呼んだけど、ほとんどのマスコミや世間は久美子社長の方に好意的な味方をしていたかと思います。高級路線から気軽に入れる店舗を目指そうという考えの方に世の中的には軍配があったわけです。
実は当時これを真逆の評価をしていた人がいて、それが当時別件でネットで散々叩かれていた長谷川豊氏だったんですよね。
曰く、今さらニトリみたいな路線に変更するなんて周回遅れだと。むしろ父親の高級路線を突き進んだ方がまだマシだとブログで展開していました。
当時の長谷川豊氏はネット民に嫌われていたので、その声は誰にも引っかからず。だけど、僕自身は彼の言い分に概ね納得していました。
商品のブランドイメージを変えなきゃいけない場合、もともと高品質高価格として認知されていたものを廉価にすることと、廉価と認知されていたものを高品質化するのは、いったいどっちが難しいかと問うた場合、おそらく世の中の多くは高品質を廉価にすることの方がハードルが低いと思うでしょう。単に引き算するだけだからと。
ところがどっこい。実際は真逆です。
高品質を廉価にして販売するほうがはるかに大変なんですよね。
なぜかと言うと、高品質商品は品質そのものだけでなく製造体制や品質保証体制に対してそれなりのコストをかけてるからです。
高品質商品は高級な材料費だけじゃなく、そういった体制にかけている固定費が大きいわけで、これらをなくすことは至難の技なんです。単純に材料費を下げるだけじゃ廉価にならないのです。
それと、そのような元々あった強固な体制を緩くしようとすると、まあ社内的に大反対する勢力が現れるわけで。結局折り合いをつけて中途半端なコストのかけ方をするってのがありがちなパターン。
製造エンジニアを長年やってきた僕は嫌と言うほど見てきましたよ。廉価版を作ろうって思っても一度上がった固定費はなかなか下げられないんです。関係者の足並みも揃わないし。高品質化の方がみんな同じ方向に向いてくれるしよっぽどやりやすいです。
今の大塚家具はたぶんそんな攻防が社内で繰り広げられていて、久美子社長が当初思い描いていたようなニトリっぽい商品群にすることは、まあ無理でしょう。
逆にもしニトリが高級路線にシフトするとしたら、それほど難しくないんじゃないかなと思いますね。品質を上げていくのは社内的にも足の引っ張り合いはないだろうし、固定費は下げるより上げる方が楽なので。
そんなわけで、久美子氏が社長になった時点で勝負は決まっていたかもしれません。久美子氏の経営手腕というより最初の戦略の問題で、プロキシーファイトの時点で株主はわかっていたことなので、大塚家具の凋落は久美子氏側についた株主にこそ原因があると思いますね。